世界の舞台に挑戦してアントレプレナーシップを獲得した東京高専卒業生のストーリー



世界の舞台に挑戦してアントレプレナーシップを獲得した東京高専卒業生のストーリー
  • 大川水緒
  • 東京工業高等専門学校
  • 情報工学科 卒業

略歴
東京高専 情報工学科 2011年卒業

大手IT企業

東京高専入学後はなんとなくの学生生活を送っていたが、4年生の時に始めたモノづくり課外活動「組み込みマイスター」がきっかけでエンジニアとしての道を歩み始める。そこで結成されたチーム「Coccolo」でプロダクトを開発し始め、2011年に高専プログラミングコンテスト自由部門1位、2012年にはマイクロソフト主催のImagine Cupで世界2位の成績を収める。現在は、大手IT企業に勤めながら、高専生向けにキャリア講演なども行なっている。

東京高専在学中にマイクロソフト主催のImagine Cupで世界2位という快挙を収めた大川さん。元から「つよつよ」な高専生だったのかと思いきや、実は高専3年生までは「何となく」過ごしていたようです。どのような転機があったのか、実際にお話を伺いました!

高専初!Imagine Cup世界2位の成績を叩き出したアントレプレナー

ー 「歌って踊れるエンジニア」の称号を持つ大川さんです。よろしくお願いします!

異能枠で生きてる大川です(笑)よろしくお願いします!

ー マイクロソフト主催のImagine Cupで世界2位という成績は、高専の歴史上では過去最高だよね。

国内チームの成績としても過去最高の成績なんです!

ー 凄すぎる!高専発アントレプレナーと呼ぶにふさわしい称号の持ち主だね。知らない人のために、簡単にImagine Cupの説明をお願いします。

Imagine Cupは、マイクロソフトが2003年に始めた世界最大規模の学生向けITコンテストです。ITに関する様々な分野で学生がプロダクトを開発し、その結果をプレゼンテーションという形で競い合います。私たちは、「可視光通信を使った省電力照明システム”All Lights!”」というタイトルで、ソフトウェアデザイン部門に挑戦しました。

ー 世界規模っていうことは、ハーバードやスタンフォードのような超有名大学も参加しているの?

海外の場合は大学内に閉じずにチームを結成しているので、大学名はわからないんです。でも、おそらくそういった大学も参加していると思います。国内では東大、阪大、東工大などの有名大学や高専のチームが多く参加していますね。

ー なるほど。参考までに、大川さん率いるチームcoccoloの最終プレゼン動画を紹介させていただきます。会場全体からオベーションが起こる最高のプレゼンテーションであるとともに、大川さんが「歌って踊れるエンジニア」となった瞬間が記録されています。

https://www.youtube.com/watch?v=_43CYWOCRr4&t=7s
※19分過ぎから動画の音楽に合わせて大川さんが踊り出します

振り返って見ると結構恥ずかしい動画ではありますが、これは私の歴史の中で最も自慢したいプレゼンです!また、このプレゼンをきっかけに声をかけられたのがご縁で今の会社に就職することになったので、エンジニアとしてのキャリアパス観点でも非常に重要な分岐点となりました。

なんとなく過ごしていた高専生活が一転、コンテストで変わった人生

ー ITエンジニアの王道のようなキャリアパスを描いてきたんだね。Imagine Cupの前年には高専プロコンの自由部門1位も獲得しているけれど、昔からエンジニアとしてゴリゴリ活動していたの?

いえ、それが実は全然そうじゃないんです。高専に入った時はそもそもモノづくりに強い関心があったわけではなく、「なんとなく5年間過ごして就職するんだろうな」と思ってる普通の学生でした。

ー 残した成績からは想像できない意外な発言(笑)

そもそも高専に入ったのも、「家が近い」「制服がないからスカートを履かなくていい」「女子が少ないから気を遣わなくていい」という、モノづくりからはかけ離れた理由でした。私ドラクエが大好きで、4歳の頃から全作やり尽くしているんです。それで、昔から女子より男子と遊んでいた方が話題が合うタイプの子供で。中学の頃は全国的に有名な先生がいるソフトテニス部で鍛えられたので、日焼けで真っ黒な男勝りキャラになってて。女子トイレに入ろうとしたら「そっちじゃないよ!」って掃除のおばさんに怒られるくらい男子だったんです(笑)

ー 快活で運動部に所属する中学生時代。オタク族の高専生から見ると異世界の住人だね。

モノづくりがしたくて高専に入った人には申しわけないです(笑)

そんな動機で高専に入学したので、最初の3年間はソフトテニス部の活動をガッツリやりながらも、正直何となく生活していました。そんな中、4年生の時に東京高専で「組み込みマイスター」というモノづくりの課外活動が始まったんです。それで、「せっかく高専に入ったのに、モノづくりしないで終わっちゃうのは勿体ないなぁ。」と思い参加することにしたんです。

ー そこで結成されたのがチーム「Coccolo」だったの?

Coccoloの原型となるチームがそこで出来上がりました。それからチームでモノづくりを始めたのですが、作ったプロダクトが「プロコンのテーマに合ってるから出してみたら?」と先生に誘われて、高専5年生の時に初めてコンテストに出場することになりました。

ー 優勝する前年にもプロコンに出てたんだ。その時の結果はどうだったの?

予選は無事に勝ち抜いたのですが、本戦の全国大会では優勝を勝ち取ることができず「特別賞」を受賞するに止まりました。

ー 受賞しただけでもすごいと思うけど…

受賞も嬉しかったし、チームとしてとてもいい体験ができたなとは思いました。でも、正直悔しさの方が99%くらいでしたね。「私たちのチームはこんな成績で終わるレベルじゃない」って本気で信じていたので、チームリーダーとしては悔しくて悔しくてたまらなかったです。

ー チームで活動することで、リーダーとして目覚めたんだね。

そんなカッコいいものではないのですが(笑)

それで、私は就職するつもりで高専に入っていて、その頃には既に企業の内定も頂いていたんです。Coccoloの活動にはもの凄く後ろ髪を引かれる思いはありましたが、学校推薦で頂いた内定という事情もあり、そのまま就職するつもりでいました。ところが、気持ちを汲み取ってくれた先生に「本当にそれでいいの?やりたいことがあるんだったら、内定を蹴ってもいい。先生が謝ってあげるよ。」と言われたんです。

ー そんな青春時代あるの?

本当に、先生がそう言ってくれたんです(笑)それで、色々と考えた結果「やっぱりCoccoloをやり切りたい!」と思い、東京高専の専攻科に進学することにしました。そうしたら、Coccoloのメンバーもみんな専攻科に進学することになって…。

ー 少年誌みたいに熱い展開になってきた(笑)そんな紆余曲折を経て、チームCoccoloの快進撃が始まったんだね。

はい。「こうなった以上絶対に負けられない!」と完全にスイッチが入りました。そして、チーム全員で全力で挑んだ結果、専攻科1年生の時に高専プロコンの自由部門で優勝(文部科学大臣賞/最優秀賞)を勝ち取り、翌年のImagine Cupでも世界2位の成果を手に入れることができたんです。

ー 結果はもちろん素晴らしい。けどそれ以上に、背景にあるチームメンバーそれぞれの選択や、大川さんのリーダーとしての成長が何物にも代え難い成長体験だったね。

振り返るとそうだったと思います。モノづくりに目覚めたこと以上に、「チームで大きな目標に向かって挑戦したこと」「世界の舞台でプレゼンテーションという表現に挑んだこと」が、いまの私を形作っていると思います。様々な人たちの協力を得ながら仕事を推進する、いまの仕事のスタイルもここに原点がありますし。

ー 高専での出会いや意思決定を通じて、人生が大きく変わったね。

本当に、今の私があるのは高専のおかげです。チームCoccoloを通じて得られた経験、その結果としてご縁が繋がった今の会社、そして、チームの仲間や同期の人たちという財産。高専なくして私の人生は語れないっていう状態です(笑)昨年は母校のキャリア講演会に呼んでいただいてお話したのですが、高専愛を持つ人間の1人として、若手のキャリア支援も積極的にやっていきたいと思っています。

「自ら手を挙げる」をモットーに社会で活躍する現在

ー 現在はどんな仕事をしているんですか?

大手企業にクラウドサービスを導入する仕事をしています。「クラウドサービスを導入する」と言っても、企業により様々なニーズがあるんですね。その細かいニーズを把握して、社内のエンジニアメンバーと協力しながら導入支援をするのが私の仕事の醍醐味です。あと、最近は社内向けのコミュニケーションシステムを自分で開発したりもしています。リモートワークが推奨される中で、「離れていてもチームの一体感を保てる」状態を維持したいと思っていて、それを実現するためのプロダクトを自ら手を挙げて作らせてもらっています。

ー 自ら手を挙げるところが大川さんらしくて素敵です!

自分から動くのがモットーなので(笑)

ー 最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。

未だに当時の仲間とはよく会いますが、あの時のあの環境をもう一度整えることはもうできません。普通の高校生や大学生のキラキラした青春とはちょっと違うかもしれないけれど、せっかく変わった学校に入ったんだから!ということで、是非いろんなことにチャレンジしてみてください!応援してます!

ー 素敵なコメントありがとうございます!

こちらこそ、ありがとうございました!

編集後記

高専に入ることで人生が大きく変わった大川さん。モノづくりにハマるなんて思っていなかった3年間を過ごしていた彼女が、チームを結成した途端にグローバルな冒険ストーリーを邁進するあたり、「さすがドラクエマニアだな」と思いました。また、インタビュー時に「どうやったら上手く伝わるだろうか?」と考え抜いて言葉を発していることが印象的でした。エンジニアとして素晴らしいだけでなく、表現者としても素晴らしい資質を持つ人なんだと、対話を通じて実感しました。歌って踊れて高い表現力を持つエンジニアなんて、世界に何人いるでしょうか。

それにしても、高専生や卒業生と話していると、大抵の人が「何かにハマってのめりこむ」経験をしていることに驚きます。もちろん、一人一人の個性によるところもあるのですが、高専という環境がそうさせている面もあると思っています。キャラの濃い人間が集まって、しんどい授業を乗り越えながらもしっかり自由を謳歌する。10代後半の青春期を高専に捧げると、「ちょっと変わってるけれど、ハマったらとことん追求する強い人間」になるのかもしれませんね。みなさんも、興味のあることをとことん追求して、素敵な高専卒業生になって下さい!

大川さん、ありがとうございました!

取材・文:りゅーかん(@RyuhiKanno